「私、口べたで、何も面白いこと言えなくて……人見知りで、つまらなくて臆病で……」
なんだか。
「ネガティブで、頭も悪くてぱっとしなくて陰キャラで運動音痴でこれといった取り柄もなくておまけにかわいくもなくて…」
なんだか。
「…っあああ、こんな私でごめんなさいいい~……!!」
自分で言ってて悲しくなってきました……!!!
「な、泣かないで絆奈ちゃん!!」
がくりと膝をついた私の肩に、優しく手を触れてくれた須田さん。
「絆奈ちゃん、自分のことそんなに悪く言わないで?ね?」
「…え……?」
その時、さっきまで優しかった須田さんの表情が一変する。
―――……パアンッ!!
スターターピストルの音が響く。
男子の100m走が始まったようだ。
「そんなんじゃ、あなたを好きな海音の気持ちがバカみたいじゃない」
「…………へ……?」
私には、そのスターターピストルの音が……
闇夜に光り、響き渡る雷の音のように聞こえました…。



