「そんなさみしそうな顔しないで? まだ絆奈がしたいこと、してないよ?」

「え……?」


ふいにかいとくんが立ち止まって、私の後ろ側を指さした。

その指の先を視線で追えば。


「……クレープ…」


甘い香りが私の鼻をくすぐった。


「ね、まだまだデートは終わってないよ?」

「……かいとくん…」


ぽうっと、胸の辺りがあったかくなった。


「うん、ありがとう…」



かいとくんとの、名ばかりの初デート。



……意外と、楽しめてるかも、私。