袖は長いのだし、足も膝までは隠れる。
取りあえずブラとショーツは身に付けているし、それをビキニみたいなものだと思えば平気。


(下着と水着じゃ別物だけど~?)


でも、堂々と出るんだ。
社長は私のことなど何とも思ってないーーー。


ドライヤーを止めてブラシで髪を整える。
ストレートヘアで素っぴんの自分をこんな大きな鏡で見るなんて初めてだ。



「今更ながらだけど平凡な顔立ち」


寂しく見える奥二重の目尻は垂れているし、鼻は少し高いけれど、唇がその分小さいからバランスが悪い。

いくらメイクをしても上手く仕上がらない訳だ。
目も鼻も口も、バラバラの顔から取って付けたみたいなのだから。


「以前流行ったことのあるアレに似てない?子犬や子猫がカメラに寄ってきた時のアップ写真に」


要するに童顔ぽいのだ。
だから顔を見ただけで、町内の人に嘗てのマーメイドだと直ぐにバレてしまう。


それじゃ直しようもないじゃん…と益々自分に同情する。

社長に素っぴんを見られるのは癪だけど、整形も出来ないのだから諦めよう。


往生際悪く、あれこれと独り言を喋ってからドアロックを解除した。

そろっ…とドアの隙間を開け、室内に続く通路を覗けば、社長の姿はそこには見えない。


何処にいるのだろう。
ベッドかそれともカウチソファ?