驚きに近い声を出し、まじまじと見つめる。
シルバーフレームの老眼鏡の奥の眼差しが、照れ臭いくらいに注がれている。


「孫にも衣装……ですよね」


あまりにも見られるものだからそう自分で貶した。
岩瀬さんはハッとして、「いえいえ、とんでも御座いませんよ」と手を横に振った。


「なかなかどうして気品がおありで素晴らしい。潤也様もきっと驚くことでしょう」


「またまた~。そんなお世辞を言っても何も出ませんよ〜」


笑いながら白いヒールのあるパンプスを履いた。
これもドレスに合わせて木本さんが選んできてくれたらしい。



「では、参りましょうか」


先導する岩瀬さんの後ろを歩く。
介添え人もいないけど、まるで気分は花嫁のようだ。

これから大好きな人の元へ嫁ぐような感じ。
相手は単に数時間の触れ合いがあっただけの社長だがーー。



レンタルブティックはホテルの四階にある。
同じフロアにあるレストランへ行くには従業員の目も無くて、お陰で気楽に構えていられる。


これが一階にあったらきっと大注目だった筈だ。
社長のさり気ない気遣いに感謝しながら岩瀬さんと共にレストランの中へ入った。



夕食のディナーには少し早い時間帯。
テーブルに着くお客様は疎らで、私に注目する人もいない。