「羨ましいわ〜」


そう言いながら着替えを手伝ってくれたのは、レンタルブティックの責任者の木本さん。
朝いきなり社長から電話を貰い、私に似合いそうなカクテルドレスを数点用意しておくように…と言われたのだそうだ。


「この店にある服だけじゃなくて、他の所にも探しに行くように指示されて大変だったのよ。マーメイドちゃんは身長もあるし、実際のサイズまでは知らないから結構迷ったし」


それでも流石と言うべきか、いま着ているこのドレスはウエストのサイズもピッタリだ。
V字に開いた首回りのおかげで肩幅がそんなに目立ってないし、首から垂らした長いネックレスの効果もあって、肩よりも胸の周辺に視線がいくようになっている。

何よりこのマーメイドラインがいい。裾に少しフリルがあるから肩幅の広さを軽減している。


「色も深みのあるブルーで正解ね。ヘアは今のまま緩い編み込みでもいいけどどうする?少しアレンジしてもいい?」


鏡に映った私の背後から声をかける木本さん。
自分の選んだドレスに似合うヘアにしたいようだ。


「お任せします。私、不器用だから同じヘアスタイルしか作れないし」


「じゃあ簡単に出来るのを教えてあげる。先ずはこの編み込みを解くわね」


そう言うと素早く編み込んでいた髪の毛を解いた。
スッスッ…と大きなブラシで解きほぐすと髪の毛にはツヤが出てきて綺麗だ。