否定しようと社長の様子を窺えば、多少ジロリと睨んでいるようにも見えて押し黙る。


「こいつ気が強いでしょう。ど根性の持ち主だから大変だと思うけど宜しくお願いします」


保護者か。
あんた、この人は私達よりもかなり年上だよ!?


「わかりました。こっちも気を付けていきます」


何を?!
気を付けているのはこっちなんですけど!?


(少しは自分で否定したらいいじゃない。シーサイドホテルの社長だと名乗れば皆が驚いてひれ伏すよ?)


それはどうも望まないらしい。
私の彼氏として振舞っていると、一般人と同じ扱いを受けるからいいとでも考えているみたいだ。


「ところで花梨、この人は誰だ」


そうか。若松君は自己紹介もしてなかった。


「若松直人(わかまつ なおと)君と言うんです。中学時代からの同級生」


「…ふぅん」


興味無さそうにするなら聞かないでよ。


「この島で海産物の加工品販売の会社を経営しているんです」


起業者はお父さんだけれど、去年すい臓ガンで亡くなり、その後を彼が継いだのだ。


「海産物の加工販売?」


「そうです。主に干物とか瓶詰めのウニなんか売ってます。この店で出している魚の仲買いもしてますが」


「仲買い!?」


社長の目が光った。
獲物を見つけた豹のように鋭くなる。