二人で神社のお社に参った。

私は手を合わせた瞬間、社長ともっと一緒にいたい…と願ってしまった。
頭を上げた後になって、なんて大それた願い事をしたのだろうと後悔する。

社長はそんな私の願いも知らず、呑気に海の景色を堪能している。
サングラスを外した瞳の上に手を翳し、日差しを避けながら海上に漂う陽光を見つめている。



「花梨は泳げるのか?」


急に何を聞くのかと焦った。
ドキンと胸が鳴り、狼狽しそうになるのを堪えた。


「ひ、人並みには…」


高校卒業以来、水泳はしていない。
大学時代の私は、水泳とは極力無縁な生活を送ったのだ。


「しゃ…お、小山内さんは?」


社長は止せと言われたのを思い出して、迷ったけれど苗字で呼んだ。
恋人として通そうと言われたのなら、本来は下の名前で呼ぶべきだろうが。


「泳げはするが、泳ぐのは嫌いだ」


ロクな思い出がないと言いだし、目線を私の肩に向ける。


「花梨は泳ぐのが上手そうだな」


今、絶対に肩を見て思ったでしょ。
確かにこの肩を振り回して、県大会や全国大会を勝ち抜いてきたよ。


「やだな。人並みって言ったのに」


触れられたくない過去の栄光。
あの頃の私は確かにマーメイドみたいに、ほぼ一日中水の中にいた……。


「ははは。ごめん」


そう言いつつ肩に腕を乗せる。
こいつぅ…と思いながら、少し可笑しくて微笑んだ。