「押さえろ」


リーダーの声に男達が一斉に動いた。
手首や足首を握られ、自由を奪われてしまった。


「イイねぇ。捕まったカモシカのように見える」


舐めるような視線を注ぎ、顎の下に指を置いて上を向かせる。
擦り寄る男の顔を見ないように、必死で俯きながら目をぎゅっと瞑った。



『ピポーン!』と部屋のベルが鳴ったのはその時だ。
コンコン!とノックの音も同時にして、リーダー格の男は「チッ」と小さく舌を打った。

『ピポン!ピポン!』と何度も連打されるインターホン。コンコンコン!と扉をノックする音も止まない。


「くそ!」


リーダー格の男は下っ端と思われる若い者に様子を見に行けと指図した。
若い男は出入り口に向かい、ドアの覗き穴から外の気配を窺っている。


「お客様!ちょっとドアを開けて下さいませんか?フロントでございます!」


聞いたことのない声。
フロントスタッフにこんな声の人いた?


「こー言ってますよ?」


どうしますか、と聞く男に代わり、リーダーがドアへと向かう。


「何だよ」


ドアも開けずに尋ねる。
開けて下さいと言った人は、落ち着いた声で返事をしてきた。


「うちのフロントスタッフの女性がお客様のご案内に行ったまま業務に戻っておりません。こちらにまだ居るのかどうかを確認させて頂けませんか?」