足を前に踏み出すこともせずにいたら、痺れを切らしたかのように連れ出された。

両サイドから腕を組まれ、捕らえられた動物みたいに足が床に着いてない。


「は、離して下さい!」


そんなことしなくても部屋の場所くらい指し示すってば。


「いいから、いいから。ついでに部屋まで一緒に行こうよ。スイッチの場所とかも教えて貰いたいしね」


グイグイッと引っ張られるように歩き始める。
さっき代わるように頼んだ男性スタッフは、まだ到着しないのだろうか。


「お…お客様、離して下さい。自分で歩けますから…!」


冷や汗を感じながら願うのに、前を歩く男性達も両サイドの男性もニヤつくばかり。


「ダーメ」

「もう少し先なんでしょう?」


もうこの際誰でもいいから早く来て!
このままだと私、マジでヤバい!



「……おっ、ここか、301号室」


先頭を歩いていた男がカードキーを翳した。
カチッと鳴ったロック解除の音が、私の不幸の合図みたいに思えた。


「誰か居るか?」


後ろを振り返った男の声に、腕を掴んでいる二人が首を横に振る。


「よーし、じゃあ入ろうぜ」


そう言った瞬間、ふわりと足元を掬われた。

えっ…と思った時には既に、足の先は部屋の中に入れられそうになっていた。


「きゃ…だ、誰かっ…!」


「シッ!」
「黙って!」


「んん〜っ!!」