金曜日の午後、ホテルは急に忙しくなる。
土日に合わせて宿泊するお客様のチェックインが増え、その対応に追われるからだ。

この数日間で急遽増やしたライティングの効果か、週末になると必ず訪れるヤンキー集団のお客様はまだ来ない。
あの人達は聞くところによると、この海辺の町へナンパをしに来ているそうだ。

週末ごとに女漁りを繰り返し、ヤバい事件になりそうなこともしばしばあった…と聞いている。

実際、私も何度か部屋に呼ばれそうになった。
その都度、大川主任が対応を代わり、難を逃れているのだけれど。


(今週はこのまま来て欲しくないなぁ)


そりゃ、お化けじゃないけれど、それ以上にタチが悪そうだもの。
今週は大川主任も出張でいないし、主任以外に頼れそうな男性スタッフも皆無だし。


来るな、来るな…と願う気持ちも虚しく、午後六時前になるとやっぱり彼等は訪れた。

艶のあるブラック生地に、チェーンや光るパーツを取り付けた派手なライダースーツを着ている。
髪の毛はトサカのように立っている人がいたり、茶髪とは言っても金髪に近い人もいる。

暴走族?と疑いたくなる様な感じの人ばかり。要するに、全員のガラが悪そうなのだ。



「いらっしゃいませ」


緊張した面持ちで迎え入れた。
リーダー格と思われる男性は「ども!」と軽く頭を下げながら手を挙げた。