「クラゲに刺された?」


新居への荷物を纏めながら、『酸っぱい夏ミカン事件』の話を聞いた。

社長を解任された潤也さんには二週間ほどの休みが取れ、その間にシーサイド・リゾートホテルでの挙式と簡単な披露宴を済ませた。

彼の親戚の多くは関東方面に住んでいる。だから、披露宴はもう一度することになっている。

こっちのホテルでは、潤也さんのご両親とお義母さん方の親戚、それから私の家族や親戚と同級生達が集まった。




「すっごい格差婚だけど大丈夫?花梨にホテル王子の妻が務まるの?」


姉の杏樹(あんじゅ)は挙式前に心配した。
それに対し、弟の司(つかさ)は……


「大丈夫だろ。姉ちゃんは根性だけはあるし」


一応の信頼を込めてそう言った。


二人とも既に町を出ている。
両親が私の水泳大会に付き添ってばかりいたから、やたらと独立心が強いのだ。


「何処に行ってもいいが、故郷の海を忘れるなよ」


松本先生は相変わらずな激励をくれて、私はそれに「はい!」と大きな声で返事をした。


木本さんは張り切って私をドレスアップしてくれて、「もう見納めなのね…」と寂しそうに呟き、従業員達は皆、自分達は大丈夫だと言わんばかりのサービスを見せて、「もういいから」と最後には彼に呆れられる様な始末だった。


皆の気持ちが通い合って、本当にいい披露宴だった。
つくづく幸せ者だな…と、深く実感させられた。