「それなら私が旦那と金婚式を挙げてもいいんだね?!それまであの人が生きていればの話だけどね」


大きな笑いの渦が起きて、場の雰囲気が明るくなる。
確かに銀婚式や金婚式を挙げそうな人達ならこの町には大勢いる。


「葬儀だけはホテルで挙げないで下さいよ」


社長のユーモア発言に片山さんが一本取られたような顔つきをした。それにも笑いが起きて、私の気持ちも和んできた。



町興しの話は、町内の人達との会合の際にも聞いた。
社長がホテルだけが流行っても仕方ないと言っていたと聞かされ、誰もが素晴らしい意見の持ち主だと褒めていた。


町の景色や産物が認められて、此処へ何度も訪ねたくなる要素が増えれば、最終的には町興しにも繋がっていく。

以前のような活気ある町作りを目指そうと話を締め、社長は士気を高めた。


「よーし!頑張ろう!」


「来年こそボーナスを倍にするぞ!」


今までどちらかと言えばショボくれていたおじさん連中が張り切っている。その中には大川主任もいて、私はクスッと笑いを噛んだ。


大川主任はきっと前の社長に毒されていたのだ。
外された狸の置物と盆栽のことを思い出して、可笑しくて堪らなかった。


今はホテルのアプローチには綺麗な花の寄せ植えが置いてある。
実はこれも町内にある花屋さんが持ってきて、管理も担当している。