「だったら頑張って務めさせて頂きます。ありがとうございます!」


薄っすら涙ぐむからこっちまで目頭が熱くなる。

私とディナーを食べた日に社長がまだ話せないと言ったのは、きっと彼の頭の中だけでしか描かれていない段階で、誰にも教えられる状況ではなかったからだ。


「だけど潤ちゃん、この町には結婚式を挙げるような若い者は少ないよ」


片山さんは不安材料を口にする。
過疎化の進むこの町でチャペルを作っても大丈夫なのかどうか。


「チャペルで式を挙げるのは、何も町内の人だけとは限りませんよ」


この町には確かに他に教会もない。
たった一軒だけしかないのなら、他の土地から来た人も挙げてくれるかもしれないけれど……


「そんなにうまく行きますか?こんな田舎の町で式を挙げたいと思う人なんているのかな」


不安の種は尽きない。
田舎コンプレックスのある私は、ついそんな気持ちを口にした。


「町内の人達に協力を呼び掛けて、町興しの一貫として取り組もうと思う。ホテルで挙式や披露宴を行えば、町内でもいろんな特典が受けられることにするんだ。

バカンスに来たついでに式を挙げ、他にも色々と楽しみが付いてくるとなれば、式を挙げた二人だけじゃなくて招待客にも楽しみが広がる。

それに挙式をするのは若い人だけがターゲットではない。片山さんみたいな壮年層の方達が、このチェペルで銀婚式や金婚式を挙げたっていいんだから」