翌日から社長はシーサイド・リゾートホテルの業務に戻り、自分が留守の間に伸びた業績を目にして「素晴らしい!」と皆を褒め称えた。

繁忙期の収入は例年以上のものを示していた。それで冬のボーナスには色を付けようと約束してくれた。


「今日は皆に報告したいことがある」


帰還後初めての戦略会議の場で、社長は神妙そうな顔つきをした。


ドキン!と胸が跳ねて彼を見守る。
もしかして、私が恋人だとでも紹介するつもりなのか。


「実は前のホテルに出向する前から考えていたのだが、新しい事業を始めようかと思う」


なぁんだ、そっちか。
そうだよね。私とのことを公にしたら周りが何かと煩いだろうから。


ガッカリと肩を項垂れている場合じゃない。
真剣に彼が言うことを聞かなくては。


「来年春の完成を目指して、ホテルの横にチャペルを建設しようと思う。大広間も改装して挙式と披露宴の両方が出来る施設を作る」


ブライダル部門と称し、その責任者をレンタルブティックの木本さんに一任するとした。

木本さんは初めて戦略会議に招かれて、どうして自分がこの場に呼ばれたのだろうと思っていたから、その話を聞いて驚きーーー


「本当に私でいいんですか!?」


戸惑いと共に悦んでいる様子にも見えた。
社長は彼女の腕前を見込んでのことだと話し、それを聞いた木本さんはチラリと私を窺い彼に視線を戻した。