マーメイドはホテル王子に恋をする?!

フロントへ戻ってきた時、大川主任は確実に老けたな…と思った。

いつもはもう少しマシに見える外見がヨレヨレで、その反対に「オサナイ王子」様は更に輝きを増している。



「マーメイドちゃん」


フロントへやって来た大川主任は、館内放送を使い、出勤中の全社員を集めるように…と促した。


「辞令交付をするから早く」


「はい…」


辞令交付を今から?と思いつつも、館内放送を久し振りに流した。


『全社員に連絡致します。只今より辞令交付を行いますので、大至急一階フロント前にお集まり下さい。
繰り返します。只今より辞令交付を行います。全社員は大至急フロント前にお集まり下さい』


私がマイクのスイッチを切って振り返ると、「オサナイ王子」様がジロッとこっちを睨んでいる。

あのイケメンオーラがタップリの彼が私を見ている。
目元はクールにも見えるけれど、やっぱり何処か隙がなくて怖い感じがする。


(やだぁ…何よぉ…)


睨み付けられる意味が知れない。
私の館内放送の仕方が変だったの?


ヒヤヒヤしつつフロントに集まる人達の中に潜り込んだ。
込んだ…とは言っても身長があるだけに、頭一つ分出ているから目立つのだけど。


館内放送を流してから五分後くらいに、集まれる人達は全員集まって来た。
ザワザワと騒つく社員たちの声が響くフロント前は、新年度の始業時よりも賑やかしい。