(何…あれ……)
未だにあの人が何者か見当も付かず、付き人を含めた三人が去って行った方向を見遣った。
ラウンジのレジでは女性社員達がキャーキャーと騒ぎ始め、お土産物のコーナーからは片山さんが出て来て、何事があったの?と聞く始末で。
「さぁ……それがどうもよくわからなくて…」
腑抜けた返事をする私をせっつきながら、とにかく何でもいいから教えて、と頼む。
「あー、なんか偉そうな人が大川主任を訪ねて来たんです。『オサナイ様』って呼ばれてました」
「小山内様っ!?」
片山さんの驚くような声が響き、ビクッと肩を上げた。
目を丸くしたままでいる私に、「マーメイドちゃんは知らないの!?」と素っ頓狂な声を出した。
「小山内様というのは、このホテルの経営グループの一つよ。株主で言ったら三番目くらいに株数を持っている会社なの。そこの誰が来たの?社長?それとも…」
「若い男性でした。多分、三十代くらいの人」
「だったら王子ね」
自信タップリに「王子」と呼ぶ片山さんに、そう言えば主任がそう呼んでいました…と教えた。
「誰なんですか?そのオサナイ王子って」
聞きながら自分でも少し可笑しくて、吹き出しそうになった。
オサナイ王子が「幼い王子」みたいに思えて、あの傲慢ぶりが急にただの意地張りのように見えてきたからだ。
未だにあの人が何者か見当も付かず、付き人を含めた三人が去って行った方向を見遣った。
ラウンジのレジでは女性社員達がキャーキャーと騒ぎ始め、お土産物のコーナーからは片山さんが出て来て、何事があったの?と聞く始末で。
「さぁ……それがどうもよくわからなくて…」
腑抜けた返事をする私をせっつきながら、とにかく何でもいいから教えて、と頼む。
「あー、なんか偉そうな人が大川主任を訪ねて来たんです。『オサナイ様』って呼ばれてました」
「小山内様っ!?」
片山さんの驚くような声が響き、ビクッと肩を上げた。
目を丸くしたままでいる私に、「マーメイドちゃんは知らないの!?」と素っ頓狂な声を出した。
「小山内様というのは、このホテルの経営グループの一つよ。株主で言ったら三番目くらいに株数を持っている会社なの。そこの誰が来たの?社長?それとも…」
「若い男性でした。多分、三十代くらいの人」
「だったら王子ね」
自信タップリに「王子」と呼ぶ片山さんに、そう言えば主任がそう呼んでいました…と教えた。
「誰なんですか?そのオサナイ王子って」
聞きながら自分でも少し可笑しくて、吹き出しそうになった。
オサナイ王子が「幼い王子」みたいに思えて、あの傲慢ぶりが急にただの意地張りのように見えてきたからだ。

