その時は想いを打ち明けられたら嬉しい。
最高の笑顔で彼を出迎えられるように、発声練習や滑舌訓練にも取り組んだ。


苦手なメイクはレンタルブティックの責任者の木本さんに教わり、メイクだけでなく、自分に似合う服のコーディネートやヘアアレンジなんかも教えてもらった。


彼女に言わせると、私の肩幅は心配するほど広くはないらしい。
身長も高いのだからある程度の骨格は必要だと話し、挙げ句の果てには、「モデルにだってなれるプロポーションよ」と誉めちぎった。


「私みたいな地味な顔の女子にモデルなんて無理ですよ」


そう話すと「とんでもない!」と大きな声を出す。


「今からでも遅くないからオーディションを受けてみたら?きっと何処かのモデルに採用されるわよ」


私はそれを彼女の冗談だと受け止め、「その内、気が向いたら受けますね」と笑い返した。


「その内なんて言ってたらあっという間にモデルも出来ない年頃になっちゃうわよぉ!」


木本さんは何度も「惜しい」と繰り返した。だけど、私がなりたいのは、今やモデルなんかではない。


私は社長の本当の恋人になりたいのだ。
彼の隣に立っても気後れせず、誰からも認めて貰えるような女性になりたい。

水泳で賞を総ナメてきた時と同じくらい貪欲に、彼の彼女になりたいと願っている。