社長との時間が過ごせるなら何でもいい。
本当に安っぽくて軽い女だと思われてもいいから、この田舎にいる間だけでも私の彼氏として通してくれたらいいのに……。



(不毛だな……)


そう思うのに何故なのだろう。
悔しくて涙が溢れてきて仕方ない。

社長みたいな高尚な男性に惹かれた自分が馬鹿なだけなのに、それでも諦めたくないと感じている。

雲の上に住む人を掴むようなのに、都会に戻ればきっと自分みたいな立場の女性は五万といる筈なのに。


自分だけが彼の特別な存在で有りたいと願っている。
彼に抱かれた女性は誰もが皆、そう思うに違いないのに。


たった一晩でこんなに恋に溺れてしまう自分が情けない。
相手が社長でなければ、私は猛アタックをしてでも彼を射止めようとするだろうが。


残念ながら彼はそれが可能な相手じゃない。
マーメイドと呼ばれる私の恋は、やはり泡のようになって消えるだけで終わるのだ。



……ションボリと気落ちしたまま火曜日を過ごした。

眠ると社長に抱かれた感触が思い出されていけないから、ガンガンに音を上げ、イヤホンで音楽をずっと聴いていた……。