「今日はありがとう!楽しかったよ!」
「……こちらこそ、ありがとうございました」
午後8時。最寄り駅でハグをする私たち。
私はもう立ってるのもやっとな状態で、こんなはしゃぐ真凛が羨ましいよ。
あれから私はパシリのように扱われる始末で、ついて来いだの、買ってこいだの、持ってろだの……せっかくの素敵なデートが最悪になってた。
ええ、全ては私がいけないんです。はい。分かってる。
こんな馬鹿でアホで鈍感すぎる私がよくここまで生きてこれたな、なんて真凛が楽しそうに試着してる間に何度も思った。
それでも、心は軽くなった気がする。
やっぱり真凛と出会えてよかった。
真凛は大切な友人だよまったく。
「真凛、ありがとう」
「ばーか。こちらこそだよ」
私より少し背の低い彼女はそっぽを向く。
くっ、この子には敵わないや。
照れの隠し方が毎度なぜかキュンしてしまう。
その事は一生黙ってよ。絶対なんか言われるのは間違いないから。
「また会おうね」
「うん。本当にありがとう」
「私が思うには、まだ部長も好きなんじゃないかなって思う。ま、部長に彼女が出来てたら慰めてあげるよ。パッと行こ!」
「……どーもありがとうございますー」
肩に置かれた手はそのままで、私は目を細くして心のない声で言う。
そして2人で思い切り笑った。



