部長が、私を好き?
あの部長が?
有り得ない。だって私見下されてる立場だよ?
私の方が怒られてる回数多かったんだよ?
明らかに嫌われてる存在じゃん私。
パシリだってそうじゃん。
いや、あれはたまたま私がお手洗いに行こうと口実を作ってしまったことがキッカケなんだけどね……。
真凛はなに勘違いしてるんだろ。
どこからどう見ても部長は私を好きなわけないよ。
──じゃあ、なんであの時キスしたの?
脳裏にパラノマが一気に流れ込んできた。
私を呼んだ色のない視線。
掴まれた手首。
部長の苦しそうな表情。
瞳に映った私の泣き顔。
部長はあの時何を思っていたの?
『あれは無かったことにしてくれ』
そう言った部長の切なく優しい表情が私は忘れられない。
──っ。
「美紅……」
真凜の声に私は気付いてしまったと言わんばかりの視線を向けた。



