「なんか観たいものある?」 振り向きざまに尋ねるとムス顔がまだそこにいた。 手で招いてみてもその場で留まっているばかりで、俺は小さく息をつく。 「いつまでそんな顔してんの」 「ずっと」 「なんか観たいのないの」 「いまそれどころじゃないです」 だめだこれは。何言っても聞いてくれなみたいだ。 仕方ない。適当に選んで観てやろう。 俺はまだレンタル中の黒いパッケージに手を伸ばした。 まさか、こんなおもしろいので美紅があんなになるなんて思いもしなかった。この時までは。