タケちゃん。
約束した夏祭りには今年、行きません。
中学生の頃、二人で見た花火がいちばん綺麗だったと今は思いたいから。
だけどきっと、今悲しくても恋をしているわたしのことだから、これから大人になって、誰かと花火を見に行きたくなるんだと思う。
そしてだんだん、タケちゃんの影も薄くなって、それを寂しいとすら感じなくなってしまうんだろう。

だけど、きっと思い出す。
夏がくる度、お祭りの夜、人ごみの中で勇気を振り絞るように、わたしの腕を引っ張った強引で不器用な腕を。

きっときっと思い出す。



fin.