「柚奈さん、梅田さん到着です!」
 送迎担当の職員の声に柚奈は呼ばれた。


 梅田とは、もう九十才になるお婆さんだ。
 なかなかの頑固者で少し認知も始まっているのだが、へそを曲げるとどうにもならない。
 ただ、柚奈には心を許しているようだ。


「梅田さん、おはようございます」

 柚奈は車いすの梅田に屈んで目の高さを合わせた。


「あら、柚奈さん。仕方ないから来たわよ。本当はこんな所、来たくないんだけど、柚奈さんが寂しがるって皆が言うもんでね。来てやったのよ」
 梅田の憎まれ口は毎度のことだ。


「そうですよ。待っていたんですからね…… 来てくれて嬉しいですよ」


「あら、そうかい?」
 そう言いながらも、梅田の表情は柔らかくなる。



 
 次から次へと送迎されてくる利用者達に、柚奈は冗談を言いながらにこやかに受け入れていた。