海斗はソファーに座って、柚奈の目をじっと見た。

 柚奈も、ソファーに腰を下ろした。


「俺さ、公園で野たれ死ぬかと思った時に、柚奈さん現れて、マジで綺麗な人だって思った……」


「あのさぁ…… 海斗、今までどれだけ綺麗な女優さん見て来たのよ。そんな人に言われたって、惨めなだけ……」

 柚奈は呆れて笑った。


「違う! 本当にそう思った…… この人なら大丈夫だって…… いつも、必至なのに思いっきり笑っていて、俺、マジでこの女すげ―って思った」


「海斗…… 多分、それは今、現実逃避しているからだよ……」

 柚奈は優しくほほ笑んだ。


「なんで! なんで、そう言う事を言うんだ! どうして解ってくれないんだ!」

 海斗は強く、柚奈の肩を掴んだ。


「どうしって…… 当たり前の事だから……」

「柚奈さんは、俺の事嫌い?」


 海斗は切ない目をすると、又、柚奈の唇を奪った。


 嫌いな訳が無い…… 

 でも、気持ちを認めてしまったら、辛い現実が待っているだけだ……


 柚奈は海斗から離れた……



「もう、辛い思いはたくさんなの…… 海斗は、一時の気の迷いかもしれないけど、私はそうは行かない……」


「柚奈……」


「海斗が現実の世界に戻った時、私は辛いの…… 解ってよ……」

 柚奈の目から涙が落ちた。


「ごめん……」

 海斗は柚奈を強く抱きしめた……


「海斗……」


「でも、俺を信じろよ…… 柚奈も真も守れるくらいの自信あるから……」


 守る?

 誰かに守ってもらうなんて……

 そんな事、今まで考えもしなかった……

 自分の力で頑張らなければと張りつめてきたのに……


 守るなんて言われたら……

 気持ちが崩れてしまいそうになる……


「バカじゃないの…… 現実逃避しているくせに……」

 柚奈は海斗を見て、ふっと笑った。


「そういう時もあっていいって言ったの、柚奈だよ…… でも、大丈夫だから……」

 海斗の手が、優しく柚奈の頬に触れた…… 


 今度は、柚奈の方から海斗の唇に触れた……


 きっと、辛くなる…… 



 でも、今、海斗から離れる事が出来ない……



 海斗の唇が、深くなっていき、柚奈の力は抜けて……


 海斗の手が、首筋へと降りてきて、そのまま柚奈のTシャツを捲り上げる……



 海斗の手が、柚奈の肌に触れると、体が熱くなり…… 
 

 もう、ずっと誰も触れなかった、柚奈の体が、海斗の手を求め出した……




 海斗が触れる度に、切なさと、気持ちよさに恥ずかしくも声が漏れる……


「柚奈…… 愛している……」

 海斗の唇が、柚奈の首筋に触れる……



「私も…… 愛して…… る……」



 これが、この先、辛い思い出になる事ぐらい柚奈には分かっていたのだが……


 海斗から離れる事が出来なかった……