「ありがとう…… 大丈夫だから……」

 柚奈は海斗の腕から離れようよしたが、抜け出せない。


「柚奈さん……」

「何?」


「俺、柚奈さんの事、好きだから…… さっき言ったのは嘘じゃないから……」


「またまたぁ。スーパーアイドル桐嶋海斗が何を言ってるのよ?」


 柚奈は軽く交わすと、もう一度、海斗の腕を押し、窓を開けるとベランダへ出た。

 逃げるつもりで出て来たのに、海斗もベランダへ出て柚奈と並んだ。


「アイドルだろうが、芸能人だろうが人間なんだから恋ぐらいするだろ……」


「そうかもしれないけど、それなりの相手がいるでしょ?」

 柚奈は冷静を装って言っているが、胸の中はドキドキしっぱなしだ。


「じゃあ、俺は柚奈さんを好きになっちゃいけないって事か?」


「そうよ! って、いうか、好きになる訳ないでしょ! こんなおばさん……」


「柚奈さんは、おばさんなんかじゃない! だいたい俺とだって二つしか離れてないだろ? それに…… 凄く綺麗だ……」


 驚いて見上げ柚奈の唇に、海斗の唇が被さった。

 柚奈は、必至に離れようとしたが、海斗の唇は激しく柚奈の唇を奪っていく。


 やっと、離れた海斗に柚奈は息を切らしながら言った。

「飲みすぎだよ……」

「そうかもな……」

 海斗は柚奈の手を引っ張りながら、部屋の中へと入った。


「もう、そろそろ寝よう?」

 柚奈は自分の気持ちを押し殺して言った。


「柚奈さんは俺の事、嫌い?」


「そうじゃないけど……」

「じゃあ、ちゃんと俺の話聞けよ……」


「…………」

 柚奈は黙って下を向いた。