スーパーアイドル拾いました!

「柚奈、二次会に行くでしょ?」

 望はしっかり酔って柚奈の腕を掴んで来た。


「ごめん…… 今夜はやめておくわ」
 柚奈は両手を合わせた。


「どうしてよ? 真も居ないし、朝までパターンじゃないの?」


「本当にごめん」

 柚奈が謝るが、望は解放してくれない。

 居酒屋の外へ出ると……


「望さんもそう言ってるし…… 少しだけどう?」

 所長が柚奈の側に近づいて来た。


 すると……

 一人の男の影が柚奈の後ろに現れた。


「柚奈、お待たせ!」

 帽子を被り、黒縁メガネを掛けた海斗だ!

「えっ?」

 望が驚いて、柚奈の手を離した。

「柚奈がお世話になってます」
 海斗は頭を下げた。


「いえ、いえ、こちらこそ…… どうぞ、持って帰って下さい」

 望は柚奈を海斗の前に押し出した。

「ちょっと、望!」

 海斗は柚奈の手を握ると、皆に頭を下げ歩きだした。


 海斗に引っ張られながら歩くと、後ろから二人に近づく足音がした。


「ちょっと君?」

 後を追い掛けてきたのは岸谷だ……


「なんですか?」

 海斗の目は鋭かった。


「あなたは、柚奈さんと、どういう関係なんですか?」


「恋人です」

「えっ。そ、それは……」

 柚奈はしどろもどろに答えたが……


「俺は、柚奈が好きです」

 海斗は岸谷を鋭い目で見た。

 そこまで演技しなくてもと柚奈は心の中で思った。


 岸谷は、じろっと海斗を睨んだ後、柚奈に目を向けた。


「真君の事もあるんだから、冷静に考えた方がいい!」

 岸谷はそう吐き捨てると、二次会へ向かった、皆の後を追って行った。


「チッ」
 海斗が舌打ちした。


「そんなに、演技しなくても大丈夫だったのに……」

 柚奈が呆れて言った。


「俺、いつ演技って言った」


「いつって?」


「帰ろう!」

 海斗は又、柚奈の手を引っ張り歩き出した。