そんな中、一部報道者の中である噂が立った。

「あの事件は娘、エレン・フェアファクスの計画なのではないか」

当時、エレンは10歳。
普通に考えればそんなことできるわけがない。
だが、フェアファクスには「罪人を裁く国王の猟犬だ」などという都市伝説のようなものが存在しており、それが噂の発端となった。
そんな噂の真相を確かめるべく、連日エレンには記者が張り付いていた。
しかし、それに気が付いたヒューによってこれ以上孫の暮らしを脅かすなら法に訴えると言われ、記者達は引き下がった。

当時新米だったアデラも5年前の噂は知っていたし、気にはなっていた。
だが、調べようとしたときに上司や先輩にやめておけと言われ、それは叶わなかった。

そうして5年が経過した現在、このメールである。
何かあるに違いない、と思うのには十分だった。

アデラは上司には内緒でメールの送り主と接触。
現在のエレン・フェアファクスの身辺情報を調べるという交換条件で情報を手に入れた。
得た情報は簡潔に言えば「あの都市伝説は本当で、エレンは幼いながらもその才能を持っていた。そして彼女は裏社会の犯罪者たちを使い、両親を殺す算段を立てたが意見の食い違いで雇った犯罪者に殺されかけた」というもの。
正直、信憑性に欠ける。
だが、これが5年前の真相を明らかにする足がかりになればと思ったのだ。