EGOIST

「アルマ狩り、ですか」

エレンがポツリとつぶやいた。

「ここ数日頻繁に起こっているようでな。狙われているのは低ランクアルマばかりじゃ」

エレンの向かい側に座った男が組んだ手に顎を置いた状態で言った。

男の年齢は70代前半と言ったところだろうか。
もうほとんど白くなった髪をオールバックにし、ビシッとスーツを着こなしている。
エレンのほうにむけられた瞳は、エレンと同じ灰色をしている。
この男こそ、現フェアファクス当主であるヒュー・フェアファクスである。

「警察のほうはそのあたりを根城にしているチンピラの仕業という線で操作をしているそうじゃ」
「チンピラ、ですか。見え透いた嘘ですね」

エレンは切って捨てるかのように言った。

その視線が向けられている資料には、ここ数日で連続して発生している「アルマ狩り」についての情報が記載されている。

「アルマ狩り」とは、その名の通りアルマを標的とした暴行及び殺人事件の総称だ。
その件数は昔に比べれば随分と少なくなっているものの、完全になくなってはいない。