「こいつらも使うのか?」
「わかんね。連れてきたのは散歩のついで」

イアンはノートパソコンのキーボードを叩きながら言う。
ダンテはその答えに「ふぅん」と返しただけだった。

「で、今回の仕事はいったいなんなんだ?」
「それはエレンに聞くべきだな。事のあらましは知ってるが、何をアンタに頼むのか俺は知らないんでね。ま、少なからず前回みたいにむさいおっさん達と追いかけっこってわけじゃぁないのは確かだな」

よかったなとカラカラとイアンは笑う。

ダンテが思い出すのは数日前、エレンからの依頼で手を貸した仕事。

その男達は覚醒剤の売買を行っていた。
客は主に平凡な日常に飽き、刺激を求めて少し危ないことにも首を突っ込みたがる10代が中心。
とはいえ、この男達は大きな犯罪組織に属する人間ではなく、数名の仲間と屯って悪さをする所謂チンピラだ。
言い方はあれだが、大したことのない小物。
捕まえることだってそう難しくない、はずだったのだが。
男達は逃げることに関してはすこぶるうまかったのだ。
蜘蛛の巣上に伸びる細い路地は当てもなく進むのは命とりだが、目的地とそこへと続く道さえ分かっていれば敵を振り切るのはこれ以上ない場所だ。
そのため、彼らの本拠地を知らない警察が彼らを追いかけることは困難であり、それが男達をいつまでたっても逮捕できない大きな理由だった。