「アンタが怖いのは、世間一般的に秘境ともとれる方法を使う自分がエレンの横にいることと、それによってエレンに捨てられることだろう」

まるでダンテの思考を読んだかのようなイアンの言葉に、ダンテは面食らう。

「……………お前、エスパー?」
「んな能力あれば便利なんだろうけどなぁ」

俺は凡人ですよ?とイアンはケラリと笑う。
凡人が何重ものセキュリティに守られたサーバに数秒でハッキングして足跡1つ残さず必要な情報だけ引き抜いていくなんて芸当が出来るかと思いながら、ダンテは口にはしなかった。

「たぶんアンタのそれはエレン限定だろうさ。これが他人だったらアンタは絶対に気にしない。卑怯だと言われてもそれがどうしたと笑っていられるだろうし、それが原因で離れていかれても仕方がないって思うだろうさ。けど、エレン相手だとそれがどうしようもなく怖い」

ダンテは言葉が出ない。
的確な指摘である。
そして大正解である。
現にまったく反論が出てこない。

そしてダンテは額を押さえる。
何せ、自分で気づかなかった部分を他人に的確に指摘されたのである。
情けないやら恥ずかしいやら。

「ホンット、なんなんだよお前。他人の心理状況を読むのはエレンの専売特許だろ」
「おー、当たってて何より。安心しな、山勘だから」
「…………」