エレンは物陰で息をひそめていた。
視線の先には若い男が3人と少女が1人。
男のほうはパーティーの主催者の息子とその取り巻き。
少女は招待客の娘。

エレンが本日パーティーに参加したのはヒューに声をかけられたからではない。
確かにパーティーがあるから参加しないかという声は確かにヒューからかかったのだが、決して強制力のある物ではない。
国王からの物ではないが仕事を抱えている現在、普段なら断る。
今回そうしなかったのは、パーティー参加者が今回の仕事に関係のある人間がいたからだ。

最近、巷である違法薬物が出回るようになっていた。
裏社会ではよくあることだが、その薬の出どころはどうやら裏社会ではなく表社会であるらしいということが判明した。
そこで警察はその出どころ探しに奔走しているが、なかなか見つけられない。
そうこうしているうちに違法薬物による中毒で病院に搬送される人間が増えていく。
気が付けば裏社会にまで出回る一歩手前までいっていた。
もし裏社会で売買されようものなら御三家が黙ってはいないだろう。
裏社会では違法薬物の売買は禁止されてこそいないが、それは御三家が許可を出している範囲での話だ。
もし許可なく売買をしたなら命はない。
そんなことになればただでさえ低い警察の信用がガタ落ちする。
それだけは避けたいと、エレンに協力依頼が来たのである。
そうして探した結果、違法薬物の売買の大本がこのパーティーの主催者の息子であるクルト・キュンツェルとその取り巻きのファビアン・トイフェルとディルク・ウンラントであることが発覚した。