「…………そうさな。とりあえず、どんな仕事でも全うするってのが大前提だな」
「それはもちろん」
「エレン、いないぞ」
「は?」

言われてラッセルはホールの中を見回す。
確かに、エレンの姿はどこにもない。

「勝手にウロチョロしやがって」

ラッセルはそうつぶやき舌打ちをした。
ダンテに聞こえていないと思っているようだが、バッチリと聞こえている。

「オタクの今の仕事はエレンの付き添いだろう。勝手にウロチョロしたのはオタクだ。オタクが怒るのはお門違いってもんだ」

ラッセルがダンテの方を振り返った。

「エレンをその辺の財閥の御令嬢と一緒にするなよ。あいつがここの仕事は、じーさんの傍で大人しく愛想を振りまくことじゃない」

ダンテの言葉に、ラッセルは眉間に皺を寄せた。
ダンテの言葉を意味を、理解しかねているらしい。

「それが分からないようじゃ、オタク、早々にエレンの御付きを外されるぞ」

そう言い、ダンテは壁から離れた。

「ま、とりあえず今はエレンを探すのが先かね」

そう言い、ダンテはホールの出口に向かって歩き出した。
が、思い出したように足を止めた。

「あぁ、そう言えば俺がエレンの傍を離れることになった理由、だったか。オタクが俺のことを誰にどう聞いたのかは知らんが、俺はあいつの御付きじゃないぜ。たまに仕事を手伝ってた知人だ。もとより、エレンには決まった付き人なんて存在しない。今は今後の事も考えて探してるところだろう。誰がなるのかなんて俺は知らんが、少なからずオタクじゃないのは確かだな」

それだけ言うと、ダンテは足早にホールを出た。