「少し、よろしいですか?」

そう声をかけられ、下げ気味になっていた視線を上げると、先程エレンの横に立っていた青年と視線が合った。
ダンテはわずかに眉間に皺を寄せた。

「ラッセル・アビントンと申します。現在、エレンお嬢様のお手伝いをさせていただいています。以前は貴方がよくお嬢様のお手伝いをされていたと伺っていたので、ご挨拶をと思いまして」

青年はダンテの返答を待つつもりがないのか、ラッセルはそう自己紹介をした。

「そりゃわざわざどーも」

ダンテは素っ気ない言葉を返した。

「それで、貴方に少々お伺いしたいことがありまして」

そう言って言葉を一度切り、ラッセルは続ける。

「お嬢様とうまく付き合っていく方法や、貴方が何故お嬢様付きを外された理由をお伺いしたくて」

ダンテは眉間の皺を深くした。

この目の前の青年が一体何を考えているのか全くつかめない。
ただ、純粋にエレンの仕事の手伝いをしたいと思っているわけではなく、出世の足掛け程度にしか思っていないであろうことは、その張り付いた愛想笑いからにじみ出る雰囲気で悟った。

ダンテは一度逡巡するように視線を彷徨わせた後、口を開いた。