一口グラスの中身を口に含み、飲み下す。

(あー、もう。未練タラタラじゃねぇか)

なんて、先程の自分を思い返して重々しく息を吐き出した。
あの時はどうにか感情を押し込んだものの、一度湧き上がった感情はどうにも簡単には消えそうにない。

エレンに恋愛感情を抱いたのがいつだったかは覚えてはいない。
覚えていないが、その感情に気づいた時点で、ダンテはそれを告げないことを決めた。
エレンがどういうところの住人で、これからどういう道を辿るかを、ダンテは知っていた。
であれば、自分がエレンとそういう関係になるのは間違っている。

そもそも、ダンテは誰かと深い関係になるつもりがなかった。
人間不信というわけではない。
ただ、人間関係は後腐れのない、さっぱりとしたもののほうがいい。
それが長年の考えであり、それは今も変わらない。

だから、エレンともそうはならない。
住む世界が違うのならばなおさらだ。

それでも、幼いころに密かに決めたあの決意だけは違えたくなくて、今日までの付き合いとなる。
そこに少しでも好いた相手の隣に居たいという邪な考えが全くなかったかというと、そうとは言い切れないのだが―――。