エレンには信用している人間は多く存在するが、信頼する人間は半分にも満たない。
その中に含まれるのがイアンであり、ダンテだ。
元々エルドレッドもその中に含まれていたのだが、ある時を境に、エレンは彼を信頼できなくなり、さらに他人を簡単に信頼できなくなってしまった。

簡単に人を信用したり信頼してしまうのは問題だが、あまりに信頼しないのもまた問題だ。
それはエレン自身も理解しているのだが、だからと言ってすぐに直せるようなことでもなかった。
それくらいに、エレンの中でその出来事は大きなものだった。

「お前が継ごうとしてる仕事は信頼できない人間を傍に置いておいて上手くいくようなもんじゃない。だからこそ、時間をかけてでも信頼できる人間を探そうとしてるのも分かるけどさ。俺には、あいつほどお前が信頼できる人間が出てくるとは思えない」

いったい自分の何が分かるのか、とはエレンは言わない。
何せ、長年姉弟のように過ごしてきたイアンである。
全てとまではいかずとも、エレンの事はよく分かっている。
だから、それは時折痛いところをついてくる。
イアンもそれを知っていて敢えて口にする。

「相変わらず、容赦ありませんね。貴方は」
「だってお前相手ですし?」

やや渋い顔で笑うエレンに、イアンはニカリと笑った。