エレンの答えに、少年は片眉を上げた。

「じゃぁ何故アンタはあの男を否定するの?仕事だから?」
「仕事だからというのもありますが、単に気に食わないんです」
「気に食わない?」
「はい。私には正義や悪を語ることはできませんが、自分の中で正しいと思うことはある。それは正義だなんて言うほど大層なものではありませんが。それを彼や彼を再び日の下に出した人間はそれを犯した」

だから気に食わないのだと、エレンは言う。

「アンタの正しいと思う事って?」
「大切なモノのために正しくあろうとすること。その行為が世間一般的に正義と取られるのか悪と取られるのかなんてどうだっていい。私は私の正しいと思うことのためなら政府だって王だって、敵に回すことを厭わない」

「ほら、こんなものが正義であるわけがないでしょう?」とエレンは笑った。
その目には狂気にも似た色がちらつく。

「大切なモノとはなんですか?」

金髪の少女が尋ねた。

「さぁ、それについてはノーコメントです。人なのかもしれないし物かもしれない。そもそも目に捕らえることができない物かもしれませんね」

そうエレンは静かに言う。
その目にもう狂気は見えない。
だが、代わりにその真意も見えない。

「では、貴方方は何のために、ここにいますか?」

エレンはそう言葉を投げた。