学校の駐輪場に止めていたバイクに跨り、ヒューが所有する屋敷に向かう。

扉をぶち破る勢いで開け、驚いた使用人たちを放置してズカズカと目的の部屋に向かう。
向かった先は家主の書斎。
ノックもせずに開ければ、一斉に視線を向けられた。
その視線を気にすることなく、ダンテは視線を走らせる。
そして、自分を呼び出したイアンの姿をとらえた。

「いいのか?お前があれだけ嫌がってた「こっち側」に突っ込むことになるんだぜ?」
「呼び出した本人が言う言葉とは思えねぇな」
「俺は絶対来いとは言ってない」

確かにその通りである。
イアンは覚悟があるなら来いと言った。
それを、ダンテは聞いていなかったわけではない。

「覚悟?んなもん出来るか。今でも引き返したくてたまらねぇよ」

けど、とダンテは続けた。

「それ以上にあいつにいなくなられちゃこっちが困るんでね。なら、あの得体のしれないもんにだって耐えてみせるさ」

そう言いダンテはまるで何かに挑むように笑った。
それにイアンは満足げに笑った。

「だってさ。俺からすれば上等だと思うんだけどアンタはどう思う、当主殿」

イアンが黙って2人のやり取りを見ていたヒューに話を振った。

「そうだのう…………」

ヒューがダンテを見定めるように目を細めた。