ダンテは講義が終わってからもすぐに席から立ち上がろうとわせず、頬杖をついてぼんやりとしている。

「おう、どうしたダンテ。眠そうだな」
「眠そうなんじゃなくて眠いんだよ、実際」

くわ、と欠伸をしながらダンテは同級生に向かって答える。

ここ数日夢見が悪く、まともに眠れていない。
おかげで講義の内容が頭に入らない。

「なんだ、夜更かしか?」
「そんなんじゃねぇよ。寝れないだけ」

あー、くそ眠いとダンテは本日何度目か分からない悪態を吐き出した。

「荒れてるなぁ。そういう時は気分転換だ。どっか行くか?」
「んー…………」

それでどうにかなるような物ではないことは知っている。
しかし、この欝々とした気分をどうにかしたいというのもある。
あまり回らない頭でどうするかと考えている時だった。
スマートフォンが着信が入ったことを知らせる。
スマートフォンを手に取り、ディスプレイを確認するとイアンだった。

イアンから連絡が来ることはそう珍しくはないが、エレンが仕事中、大抵彼もそのサポートをしているためイアンが連絡してくることはまずない。
ない、はずなのだが現に電話がかかってきている。
嫌な予感しかしない。
ダンテは電話に出た。

「珍しいな、どうした」

そう、努めていつもの軽い調子で電話に応じる。