それを静かに聞きながら、エレンは考えを巡らせる。

おそらく、死刑囚の子供であるということで世間体を気にした両親が、子供が生まれた時点で彼女から取り上げたのかもしれない。
財力を持つ財閥の主であれば、裏から手を回すことなど容易かろう。

問題は、その子供が一体どこで生きていたかという事。
時期的にそれらしい子供が孤児院に預けられたという記録はなかった。
だとするなら地下街かどこかに連れて行った可能性が出てくるのだが、一般の病院の人間が、わざわざ地下街まで下りるとは考えにくい。

「お父様はあの子達は死んだといったけど、嘘だったんだわ」

なんて、言いながらマーシャは少し不機嫌そうな顔をした。

「でも、3人とも元気だったの。歳も貴女と同じくらいで………」

その言葉に、エレンは思わず息をのんだ。
彼女が子供を身籠ったのは資料では7年前。
それでエレンと同じくらいの外見年齢、というのはおかしい。
それに彼女は気づいていないのか、それともその現実から目をそらしているのか。

誰かが彼女の子供を騙っているのか。
しかし、そんなことをする理由がない。

(だとすると………)

エレンの中に1つの可能性が出てくる。
まだ、確証は持てないが―――。