「…なぁ、今日はキスしてもいいよな?」


考え事をしていたから、春馬さんが私の後ろに移動してきたことも気づかなかった。


後ろから抱きしめて、少しからかうように言う春馬さん。


「もう、それは忘れて」


「いや、あんな可愛いこと忘れろなんてのが無理だろ。キスしようとしたら、歯が痛くて虫歯かもしれないから、移したくないからキス出来ないなんて」


つい、三日前の話。突然右の奥歯が痛くなって、虫歯かもしれないと思った私は、春馬さんと毎日交わす行ってらっしゃいのキスを拒んだ。


まさか、虫歯が移るというのは、三歳までだとも知らず。


当然、わけもわからずにそんなことをいう私にムッとする春馬さんに、私は「虫歯を移したくない」と言うと、


一瞬、キョトンとした表情を浮かべた瞬間、春馬さんが大声をあげて笑い始めた。