「泣き止んだか?まだ泣くなよ。お前の両親に怒られんだろうが」


その一言で、ぴたっと涙も止まった。

私の両親?!何を言ってるのだろう。
頭を上げて、社長と向き合った。


言われたことを理解出来ていない私に、軽くため息をついて、呆れたように社長は、こう言った。


「せっかく場所まで用意したのに、まだわかんねーのか、バカ女。お人好しも大概にしろよ」


「バ、バカって。それに私はお人好しじゃなくて今回の件は・・・」


そう言いかけた私を静止するように、社長は私の両肩に手を置いた。


「お前が未婚なのが悪い。答えは簡単。
俺と結婚しろ!俺に全部委ねろ!」


「はっ?!ど、どういうことですか?」


「お前、絶対に結婚詐欺に引っかかるタイプだ!心配で見てられねー。あのおばさんも釘は指したものの万が一のこともあるしな」


ああ、そういうことか。
私の為に、わざわざ偽装結婚までしようと言ってくれているわけね。


「・・・そこまで、落ちぶれてないですよ。偽装結婚なんてしていただかなくても、私、もう大丈夫です」


「偽装結婚?!何、言ってんだ、お前」


「そうですよね?私がまた叔母さんに狙われるからとか、結婚詐欺にあうかもしれなくて心配だから結婚するって、偽装結婚ってことですよね?」


キッと社長を睨みつけた。
私は、あなたのことを好きなのに、心配や同情で偽装結婚なんてして欲しくない。