季節は春まっさかりの五月。ゴールデンウイークも明けた五月病になりかけの夜、私は一人、背中まで伸びた髪を束ね、職場に残りパソコン画面とにらめっこしていた。


「この配置はイマイチか。もっとわかりやすくしたいんたけどな」


私、宮崎理央(みやざきりお)はアパレルブランド、Port de la fleur(ポートデラフルール)でアパレルバイヤーとして三年働いている。


Port de la fleurは店舗を持たないウェブ限定のアパレルショップで、最近ではドラマの衣装としてもよく使用されるようになり、注目を浴びているブランド。


この前人気女優が衣装で着たコートは販売一時間もせずに完売した。


私たちのショップは店舗がない分、お客様に直接商品を手にとってもらうことが出来ないデメリットがあるため、ドラマで使用して貰えることは本当にありがたかった。

「まだやってんのかよ」

「社長、まだお帰りじゃなかったんですか?」

「寝てたらこんな時間だったんだよ。腹減ったし、帰るかな」

「・・・どうぞ、戸締りはしておきますので。お疲れさまでした」