そいつは気がついたらここにいた。

いてくれと頼んだつもりは微塵もない。

家が近くて母同士が仲がよくてよく一緒にいたことを覚えている。そのときは相手が何なのかすら意識していなかっただろう。

学び始めた頃、そいつと一緒に登校していた。ただ家が近いから。理由はいらなかった。

背伸びした頃、気付いたら隣にいた。いつも通りの距離。まだ理由はいらなかった。

自立した頃そいつと離れると思われた。当たり前が消えたのは、少しだけ寂しかった。だがそいつは隣にいた。曖昧な理由がいた。

毛嫌いするくらい嫌いじゃないけれど愛は芽生えない。そんなもんだと勘違いしていたのだろう。