<振りかえって>

はるの暖かな日差し

桜舞う川沿い

新しい制服に身を包み

私は空を見上げ歩く

自転車も歩行者も

すべてがまるで絵の中のよう

止まってはいないけれど

世話しなく動いてもいない

まるで絵の中のひとこまが

そのまま抜け出してきたみたい

ふと通り抜けた春風を

目でおって振り返る

あっと気がついたときには

君と目があっていた

同じ制服に身を包み

私から目をそらさない

同じ春を感じながら

暖かな川沿いを歩いていた

目をそらさない彼と私

彼があるきだし通りすぎる

イヤホンをはめていた耳も

うっすら染めた形跡のある髪も

色の抜けたであろう肌も

すべてが私の目に飛び込んで

はるが私にもたらした奇跡

私は心踊らせながら

桜の道を歩きだした

桜のほのかに甘い香りは

これから訪れる出会いと

恋の前触れを感じさせるように

辺りをゆったりと漂っていた