小指が離れて行くと、静かに涙が頬を伝う。
そっと涙を拭いてくれる手。そして、私の唇に優しいキスをくれた。今までにない、優しく、少ししょっぱい涙味のキスを。
ギュッと抱き合った。会えない間、海斗さんの匂い、体温、力強い腕を忘れないように。
たった一ヶ月半…。そう、この時は思っていた。
一ヶ月半後には、またこうして、抱き締めてくれることを信じていた。この時までは……。
家の前まで送ってくれた海斗さんに、私は左薬指にある指輪を外して海斗さんに渡す。そして、海斗さんの左手薬指の指輪を私は外す。
「次に会うまで、私のは海斗さんが持っていてください。海斗さんのは、私が持っています。」
海斗さんは笑いながら、自分の左手小指に指輪をはめた。
「お前指輪小さいな。」
私が薬指にする指輪は海斗さんの小指にぴったりだった。
海斗さんの指輪はどの指にしてもブカブカ。

