約束の時間の少し前に家の外で、海斗さんが来るのを待った。
目の前にこの間と同じ車が止まる。窓から、海斗さんの顔が見えた。
私は助手席のドアを開けて、車に乗り込むと、車はゆっくりと走り出した。
「風邪引くから、外で待たなくて良かったのに。」
「大丈夫。そんなに待ってないし。」
車で、40分くらい行くと、学問の神様で、有名な神社に着いた。車を駐車場に停めと、境内に向かって、歩き出す。
普段以上に多い参拝者。ここで、はぐれたら最後とゆわんばかりの人に、気が滅入てしまいそう。
「ほら、紗姫手出せ。」
海斗さんが、左手を出す。
「いいの?」
「水族館みたいに迷子になったら大変だし。」
ニャリと嫌みな笑顔で、こっちを見ている。そんな顔にも、ドッキとさてしまう。
「迷子なんか、なりません。」
ぷくっと、頬を膨らませながら、海斗さんの手を握った。
「そんなに膨れ面するなよ。」
パンパンに膨らんだ頬を、海斗さんの長い指で、つっかれる。

