そんな彼女の言い草に少しだけムカっときた。



何も知らないくせに。君は陸で立派に息ができているんだろう。



でも僕は手も足も自在に動かせない、深い闇の中にしかいられないんだ。




「…君は水中にいる僕の気持ちがわからない。」



「は?水中?」



「僕は目を瞑って、自由を奪われた狭い水中にしか居場所がない。理不尽に沈められて、全てが泡に消える世界でしか。」



「…あ、そう。それならどうして私は水中にいないと決め付けるわけ?」




傘に打ち付ける雨がひどくなってきた。



その音が大きすぎて彼女の声を間違って聞き取ったのかと疑いたくなる。



どうして私が水中にいないと思ったのか?なんて言われて、思わず口をつぐませてしまった。