「君はどこまで行くの?」
「駅まで。…そっちは? 」
「僕も駅まで。」
小さな傘の中、バラバラなリズムを合わせるように歩く。
時々彼女に肩がぶつかりそうになって、慌てて距離を取ろうとして左肩が濡れることも多かった。
「…一言言っておくけど、私、あなたのクラスメイトなんだよね。」
「…え、」
「やっぱり驚いた顔すると思った。君、いつも周りに興味なさそうだし、つまらなそうな顔してる。」
目を見開いて彼女の方を向くと、切れ長の目と視線が合う。
ぶくぶくぶくぶく。
僕の小さな世界に、音を立てて誰かが入ってくる。
水中で目を開けるのが怖くて、誰かも確認できない。
「それは、…どういう意味?」
「つまらなそうって意味。自分の世界で充分なんですって顔をしてて誰とも関わろうとしない知ろうとしない。そんな狭い箱の中に入ってて何が見えるの?」


