「気を付け!礼!」

日直の声がクラス中に響き渡る。

次は楓が楽しみにしていた席替えだ。私は、窓側の一番後ろの席だったらいいなぁ。授業中寝ててもばれないし。なんたって日当たりもいいしね。まぁそれは高望みしすぎかな。

「藍、いよいよだね。やっと前の席から離れられるぅ!」

楓にとってこの席替えは死ぬほど大事なものだ。

「隣同士だったらいいよね~。そしたらさ、授業中でも楓と話せるのにぃ」

「そんなこと考えてるから、英語で20点とかとるんだよ~」

まぁ確かにそうだけど、英語だけは本当に苦手なんだもん。だいたいなんで私は日本人なのに英語を勉強しなくちゃいけないの?・・・そうだそうだ!もう、グローバル化社会反対!

「藍~心の声全部聞こえてるよ~」

「うそ~、だってそうでしょ!英語とか英語翻訳機のアプリ使えばいちころじゃんか」

「うわぁ、日本の将来心配~」

と笑いながら楓は答える。

「相変わらず、楓はひどいなあ。あっ私が塩だったら楓は毒じゃん」

「ふふっ毒舌の毒か~、確かにそうかも。ってあれ?あと1分で席替えじゃん!」

「本当だ!いい席になれるといいね!楓の健闘をいのろう」

と偉人っぽく言った。

「私だって、藍の健闘をいのろう」

と楓も偉人風に楓は答えた。すると笑いながら楓は自分の席へと去って行った。


  キーンコーンカーンコーン

「よし。じゃあさっそく席替えを始めるぞ~」

田原先生の声がかかる。田原先生は40代ぐらいの先生で、最近後頭部の髪の毛がなくなってきてると話題の先生だ。怒らせたら、反省文5枚とか書かなくちゃいけないし、本当にめんどくさい。いや、厳しいというのかな?

「じゃあ、左前の人からくじひいてけ~」

というと先生はくじをどんどんまわしていった。なかには

「また、この席~嫌だ~」とか

「よっしゃ!窓側ゲット」とか言ってる生徒もいる。

あ、次は私だ。先生が「引けよ」という目線で合図する。私はあえて、一番はしっこにあるくじを引いた。ゆっくりと開けてみる。くじには14番と書いてあった。1列7人だから、14番目は~2列目の一番最後だ!やったぁ、窓側にはなれなかったけど窓から2列目だからほぼ窓側のようなものだ。

楓はどうだったのだろうか。楓の方に頭を向ける。楓は悲しい表情をして指で自分の机の下を刺した。きっとまた同じ席だったのだろう。可哀想に。

と考えていたら、先生が

「じゃあ自分の席に移動開始」

と言った。一斉にみんなが机を持って様々な方向に机を運ぶ。私は近い距離だったためすぐに移動ができた。席に着いた私は隣が誰かなぁ~とか考えていた。女の子だったらいいのに。授業中にガールズトークできるのになぁ。

  ガタッ

左隣で音がした。とっさに左を向く。そこにはとんでもない光景があった。なんと、あの八王子 藍一郎がいたのだ。