「うるさいなぁ…。」
ピピピピ…と目覚まし時計が鳴り響く。
目覚まし時計を止めると、「ふぁぁ。」とあくびをして、スケジュール帳を開いた。
「て、今日修旅じゃんっ!」
今日、9月20日には、赤いペンで大きく、修学旅行と書かれていた。
「うわっ、髪も洗わなくちゃっ!!あー、あと支度は…バッチリだから…あー!メイク道具忘れてるし!」
その日は、慌ただしい朝から始まった。

「愛華!相変わらず遅いね~」
ここにいるのは、水野雫。
雫はいつも、毎朝5時には起きているらしい。
それに比べ、私はいつも6時起きだ。
「ごめーん!髪型のセットとメイクに時間かかっちゃった~」
「愛華、いつも身だしなみにこってるよね」
髪型のセット、メイクではなく髪を洗っていなかった、メイク道具をバッグに入れていなかったとは思っていないであろう。
嘘だとは言わず、「そうかな~」と恥ずかしながら言う。

「ねぇ、知ってた?修旅って、恋が始まる学校行事、第2位なんだよ!」
「へぇ~。でも、私には恋愛なんて向いてないよ…」
「そうかな~。私より絶対早く付き合いそう~」
よくある女子の褒め合いを割るかのように、電車が大きな音をたてながらホームへと到着した。
ぼーっとしていた私の肩をとんとん、とたたき、「行くよ」と雫は言った。
(今日は、何かが起こりそうな日だな。)

「あ、水野じゃん。おはよ」
「あー、にっしー、また放送かけんの忘れたっしょ!花音がやってくれたよっ?なんか言うことあるでしょ」
「うう、ごめんな、赤崎!」
「いや、全然いいよ~!」
「花音もあんまり甘やかさないの!にっしーも、放送忘れないように!」
にっしーとは、青西大翔。
いつも同じ放送係の雫に怒られっぱなし。
赤崎花音は、いつもにっしーが忘れる放送をいつもやってくれている。クラスでも、赤崎に謝れよ!とか、花音、また放送だね~。とか、にっしーを焦らせる言葉が飛び交っている。
「にっしー、ダメダメじゃ~ん。またこっちーに怒られるよ?」
こっちー、または小池先生。
毎回にっしーに怒っている先生だ。
「えー!また放課後補習です!とか言われてやらされんのかな~いやだな~」
「自業自得でしょ~(笑)」
ここまでは、いつもの教室の会話だった。

ギシ…と音をたてながら小池先生が入ってくる。
「青西くん、また放送忘れたでしょ!放送係引退する?」
「えええ~やめてくださいよ~そーゆーの!」
しんと静まり返っていた教室が、ざわざわしてきた。
「さて、今日は修学旅行です!青春しましょーねー!」
「イェーイ!!」
(恋の始まる学校行事、第2位。か…)
第1話、終